そうだったのか、とユーリはぼんやり驚く。グールの生態が、そんな変わったものだとは、知らなかった。しかし考えてみれば、 人間と同じようにグールが増えるのであれば、今頃とっくに人類は喰い尽くされているだろう。

「ミト、モギ、コン、ヒューゴ、ヨミネ、イザヤ。常にグール=領主の数は七人で固定されているはずなのに、この前死んだばかりのムジカも含めると、一人多いことになるわ」

ザネリはあまり興味がなさそうに、グラスに残ったワインを仰いだ。

「ま、その辺は我々には関係ないことさ。問題は、とにもかくにもイオキが、非常に高い利用価値を持っているということだ」

スーラがしたり顔で頷く。

「反グール主義者に売っても良し。その子を人質にして、エイト・フィールドが直接グールと取引することも出来ますものね」

「……でもその子は、どっかに逃げちまったわけよね」

 カトリの目が、不穏な光でギラリと輝き、ユーリははっと身じろぎした。ザネリが笑いながら、こちらを見た。

「そう。彼と一緒にね」

 スーラがこちらを見る。カトリがこちらを見る。その視線に含まれた殺気を瞬時に感じ取り、ユーリの背筋が凍る。

 ユーリは部屋から逃げ出そうと、踵を返した。
 しかし襖にかけたその手に、ナイフが刺さった。

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