町中に現れた松明の明かりは、あっという間に増え、町の天辺に向かってうねり始めた。

 邪を祓う為に灯された、松明の炎。囃子の代わりに響く、「人喰いの鬼子を殺せ!」という叫び。

 にわかに沸き起こった祭りに、山道入り口の警官たちは混乱した。持ち場を離れるわけにもいかず、無線で町中の仲間と連絡を取り合う内に、 やがて、一報がもたらされる。

「町の住民が、墓荒らしの犯人を見つけたらしい。最近この町に連れて来られた、例の子供だそうだ」

警官たちがざわめく中、グレオはパトカーの無線を取り、「何故、こんな大騒ぎに」と尋ねた。

『それが…… その子供が、墓から暴いて死体を喰ったと、住民たちは言っている』

 そんな馬鹿な、と誰かが呆れ混じりの笑い声を上げた。次々に、賛同の声が上がる。子供一人で死体を運ぶなど、まして解体するなど、 出来るわけがない。全く、これだから田舎者は……

 しかしレッド・ペッパーの四人は、笑うどころではなかった。
 町の様子を偵察してくるという名目でその場を離れると、町中へ続く階段を駆け上がりながら、緊張を孕んだ声でテクラは呟いた。

「……グールだって、ばれたってことですよね」

相変わらず読めない表情で、トマが答える。

「必ずしも、そうとは限らない。過去に食人行為で逮捕された人間が何人かいるのは、紛れも無い事実だ。 常人離れした身体能力などを見せない限り、そういう、頭のおかしい人間と思うのが、自然だろう」

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