数十分後、オズマの運転する車の助手席で、タキオはぐったりと天井を仰いでいた。

「お前らの組織、マジで終わってるな」

「まあでも、良い経験になっただろ?」

「本当に。あのジジイに比べたら、グールの方がまだ人間的に思えてくるぜ」

「グール?」

 うっかり口を滑らせ「しまった」と表情を浮かべるタキオと、訝しげにこちらへ目をやるオズマ。 そんな二人の間に、あーっ! と大声を上げながら、後部座席からロミが割って入った。

「で、でも、あんなプライベートな秘密、どうしてオズマは知ってたの?」

無言の当人の代わりに、タキオが答える。

「こいつ、ワトムの十三人いる子供の、末っ子なんだとよ」

 何秒か沈黙があった。ロミは「え?」と目を丸くした。

 彼女の驚きぶりをバックミラー越しに見て、オズマはふっ、と自嘲気味の笑みを浮かべた。

「ろくでもない父親だろ? 俺だってな、別に、好きでエイト・フィールドにいるわけじゃないんだ。ただ、あいつの息子として生まれちまった以上、運命ってやつがさ……」

「あーあー、もういい」

 タキオは五月蝿げに頭を振った。

「お前のそういう話には、興味ない。どこか別の場所でやれ」

「ひでえ!」

 情けない抗議の声を無視し、タキオは目を閉じた。

 正午の太陽にちらつく白いススキ野原の真ん中を、車は人里に向けて、まっすぐ走っていった。

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