叫んだ拍子に、青い入院着の下、胸から臍へ、一直線に裂けるような激痛が走る。しかし、そんなものは、何でもない。 混乱した記憶と嫌な予感で締めつけられる、心臓の痛みに比べれば。

「あたしが呼びに行くよ」

 入り口で足を止めたトマに、ヒヨが低い声で言った。

「ボスはこいつに説明してやって」

 そう言って入れ替わりに出て行くヒヨが、珍しくパジャマのような綿のシャツワンピースを着ていることに、テクラは気がついた。 そしてゆったりした袖に包まれた右腕が、不自然に下がったまま動かないことに。
 思わずテクラは声をかけようとしたが、その姿は、目の前にやってきたトマに遮られた。

「……どこまで覚えてる?」

 グレオと共にパイプ椅子に腰を下ろし、トマは尋ねてきた。
 いつもと同じ、淡々とした口調に、何を考えているか分からぬ銀縁眼鏡だったが、 それでもその顔を見ただけで、テクラの気持ちは随分と安らいだ。

 テクラは枕に頭をつけると、大きく息を吐き、呟いた。

「……採掘場の中でザネリと戦って、磔にされたところまで」

 病院内に漂う薬品の匂いが、鼻腔をつんと突く。

「すみませんでした。僕、待機の命令を無視して……」

「いや、いいんだ」

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