「――直後、エイゴン警察が社に到着した。地面に倒れたはずのザネリは、いつの間にか、騒ぎに紛れて姿を消していた。俺たちも、 ヒヨを連れてその場を離脱した。それからグレオと二人で方々探し回り、ようやく採掘場で、階段に磔にされたお前を見つけた」

 トマの淡々とした語りが、無機質な病室に渦を巻き、消えていく。

 テクラは食い入るようにトマの顔を見つめ、話を聞いていた。
 いつの間にか、体は左肘をついて、起き上がりかけていた。首筋から流れる脂汗が、入院着の内側に垂れている。ひどい痛みに全身襲われているはずだったが、 何故か全くそれを感じない。

「ひどい有様だった。鎖骨の間から臍の辺りまでばっさり切られ、内臓が飛び出していた。本当に、一秒でも、 町の医者に見せるのが遅れていたら、死んでいたかもしれない」

「そこで応急手当をして、さらに麓の大病院に移してな。しかしそこの医療環境もイマイチだったんで、ワルハラの軍病院に戻ってきたんだ」

グレオはにこにこと目を細める。

「全く、本当に心配したんだぞ。ヒヨも重傷だったが、お前は本当に、何日も生死の境を彷徨っていたんだから……」

「それより、イオキ様は?」

 テクラは叫んだ。

「イオキ様は、どうなったんです?」

 束の間、沈黙があった。

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