トマとグレオは無言で、答えない。

「……ザネリがまだ生きてるなら、絶対にまた、イオキ様を狙います。その前に、今度こそ……」

 と、その時、冷たい声が響いた。

「今度なんて、もうねーんだよ」

 テクラが顔を上げると、医師と二人の看護師が、きびきびとした足取りで病室に入ってくるところだった。 その後ろには、ヒヨが。
 ヒヨはだるそうな足取りで入ってくると、「開けて」と左手に持っていたミネラルウォーターのペットボトルを、 グレオに放り投げた。

「今度がないって…… どういうことですか」

 看護師にベッドに押さえつけられながら、テクラは非難がましい目を、ヒヨに向けた。 が、何故か、その目は彼女の顔を直視出来なかった。彼女の、ぴくりとも動かない右腕の辺りから上へ、それ以上視線が動かない。

 左手で蓋の開いたペットボトルを受け取ると、ヒヨは天井へまっすぐ頭をのけぞらせ、一口飲んだ。

 テクラは怒鳴りたいのを我慢して、彼女が答えるのを待った。

「あたしたちレッド・ペッパーは、今回の任務を解かれた」

 やがて、天井の蛍光灯の方へ顔を向けたまま、ヒヨは独り言のように呟いた。

「任務失敗したんだよ」

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