オズマが呼んだタクシーに乗ると、ロミは窓越しに、街の様子を眺めた。

 道の両脇に並ぶ建物は軒並み低く、ホテルやレストラン、 土産物屋が多い。広いバスターミナルには、『ミドガルドオルム行き』と書かれたバスが何台も停まっている。が、 観光シーズンは過ぎているのか、人影はまばらだ。

 閑散とした市街地から、さらに人気のない郊外へ、タクシーは走った。
 平野に少しずつ高さが出て、やがて、白っぽい岩肌が緩やかに重なった、小さな岩山になっていく。そこに、無数の紅葉の木が生えている。ほとんど臙脂に近い濃紅 から、陽光を透かしたような朱色、黄金混ざりの橙色まで、掌の形をした大小の葉が、モザイクのように空を遮り、そして地面を覆っている。

 見渡す限り、美しい星の炎に包まれているよう。山を登っていく道は、まさに、紅葉のトンネルだ。真っ赤なアーチを進んでいくと、 やがて、道の脇に、一軒の家が見えてきた。タクシーはその前で停まった。

「フェリス・コンツェルンって知ってるか」

 タクシーから降りながら、オズマが言った。

「総帥がユニコーン号に乗ってただろ。『一つ頭の双子』を落札した男だよ。ま、結局あの後、エイト・フィールドとの癒着の 罪で捕まって、今はレトー警察に拘留されてるらしいけどよ」

タキオは無表情に話を聞いている。

「奴の遠い親戚が、ここに住んでるんだ。画家で、絵を画いてる」

 ロミは画家のアトリエを見上げた。

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