実際には、見上げる程の高さもない、小さな木造の平屋だった。岩肌がむき出しになった地面にぽつんと建っていて、 敷地を彩るような物、花壇や植木、門の類は何もない。周囲は紅葉の木立。 家の裏手だけ開けていて、そこからは、広い空を背景に、遠く塔のように聳えるシナイ山が一望出来る。

 景観に見惚れていたロミは、坊主頭がオズマの後に続けた言葉に、飛び上がった。

「この少し上に、自家用セスナと飛行場を持ってるんす。そいつを借りて、ワルハラまで一っ飛びっすよ!」

「飛行機?!」

 オズマはサングラスに貼りついた紅葉を払いながら、言った。

「飛行機なら国境防衛線も関係ないし、船で遠回りする必要もない。ここのセスナは俺も何度も使わせてもらってるし、 エイゴン空軍の目を盗むルートもばっちりだ」

「無理無理無理!」

 ロミは青い顔でぶんぶん首を振った。

「飛行機って、あの鉄の塊が、空を飛ぶんでしょ?」

 エイト・フィールドの二人は、はっはっはっと笑って、取り扱ってくれない。ロミは助けを求めてタキオの方へ振り向いたが、 タキオも肩をすくめるばかりだった。

 その時、開け放した玄関の引き戸から、優しそうな顔の男が顔を出した。

「お待ちしてましたよ」

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