私? 私は――

 勿論、そう思ってる。

 そう答えようとしたのに、出来なかった。

 いつからか一個ずつ溜まっていった小石で、いつの間にか胸の中は満杯になっている。口を開けば中身が飛び出してしまうところ まで来て、ようやく自分がそういう状態であることに気がついた、ショックと気持ちの悪さ。

 ガラスのような断面を持つ小石一つ一つに映るのは、狂爛パーティナイト、元テロリストの老いた洗濯屋、沈没するユニコーン号などだ。 祖母を殺された幼い少女の絶叫や、沈没していく船に閉じ込められて死んだ多くの人々、彼らの道連れとなった船長、そして途中で船を降りた男と、 現在隣にいる男の、ガラスの裏からこちらを見つめる瞳だ。


 彼らが毎晩夢の中で、私に問いかける。
 それならお前はどうだ? お前は何をした? タキオと共に多くの人間を、殺したのではないか?


「グールがいなくなれば、私たちはもっと幸せに暮らせるもん」

 今にも小石を吐きそうになりながら、ようやくロミは、小さな声で呟いた。

 画家は「そうかも知れませんね」とあっさり同意した。そして、優しくロミを見た。

「油絵の具の匂いは、慣れないと頭が痛いでしょう。外に出て、景色を見れば治りますよ」

 ロミは頷き、ふらふらと外へ出た。

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