「おはようございます」

 と運転席から降りてきた挨拶したコジマも、いつもの地味なスーツではなかった。花柄のチュニックにジーパン、ブーツ、 ポンチョ風コートを纏っている。

「おはよう」

 冷たい風に砂埃が舞う中、ミトは微笑んだ。

「素敵なコートだね。よく似合っている」

「ありがとうございます」

礼儀正しくコジマも微笑返すと、二人は車に乗り込み、出発した。

 車は市街地の真ん中を走っていった。車窓から見える景色は、およそ半年前、ミトが領主代行に就任した頃とはまるで違っていた。

 半年前、店には軒並みシャッターが下り、その代わり歩道を占拠する違法な露天商、砂が積もりっぱなしになった道には野良犬の糞が転がっていた。 砂埃と悪臭から逃れようとスカーフで鼻を覆いながら歩く人々の表情は陰鬱で、白地に金の太陽を描いた紋章旗だけが、 光り輝いていた。

 しかし今は、街全体が輝いている。ミトが打ち出した政策により、老朽化した建物は新築され、悪質な露天商は排除され、 道には常に除砂車が走るようになった。市場には新鮮な食料が豊富に並び、整備された公園には噴水が上がっている。 街路樹の植わった道を歩く人々の顔は、明るく輝いている。

--------------------------------------------------
[795]



/ / top
inserted by FC2 system