先ほどの行員が戻ってきて、オズマに一枚の紙を差し出す。

「ほれ、送金完了の証明書。信用出来ないなら、後で使鎧職人に口座を確認してもらえ」

 タキオに紙を手渡すと、オズマは立ち上がった。一緒に立ち上がりながら、タキオは尋ねた。

「おい、昨日の夜に電話した件は、どうなった」

「そっちの方も調査済みだ。どっかで飯食いながら話そうぜ。お前、良い飯屋知ってるか?」

「……お前とサシで飯食うとか、拷問だな」

 行員に見送られて銀行を出た二人は、雪で白と黒に区別された街を歩いていった。寒い寒いと騒ぐオズマを無視し、 タキオは記憶を頼りに、道を進んでいった。標識や信号などが雪に埋もれているせいで、随分遠回りしてしまったが、 やがて、何とか目的の店に辿り着いた。

 優雅な大通りから外れ、雑多な店が建ち並ぶ区画、古着屋とCDショップの間に挟まれるようにして、そのカレー屋はあった。 薄暗い店内にひしめく毒々しい色の造花や極彩色の置物、染み付いた香辛料の香りも、記憶の通りだった。陰気な店員が現れ、 前回来た時と同じ、二階の席に案内した。

「良い店知ってんじゃねえか」

 やがて、席に運ばれてきたビーフカレーを一口食べ、オズマはそう言った。

 マトンカレーを食べながら、タキオは黙って頷いた。

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