「それで、昨晩頼まれた件だが……」

 半分ほど銀色のプレートが空になったところで、オズマは椅子の背にかけたコートから、紙の束を取り出した。

 タキオはスプーンを置き、紙を受け取った。懐かしいな、と思わず声が出た。上の方は、アンブルの主要な新聞各紙だった。 無味乾燥な政府発行の機関紙から、カラフルな大衆新聞、そして――

「驚いた。地下新聞まで手に入れたのか」

 荒い紙に、擦れたインク。グール支配を批判する、過激な見出し。アンブル各地で活動する反グール主義組織が、検閲をかいくぐって 発行した地下新聞までもが数部、混じっている。

 新聞の束をめくりながら、タキオは懐かしさと感心の混じったため息を漏らしたが、感慨に浸っている場合ではなかった。

 一週間程前の日付の新聞はどれも一面で、アンブル第四都市、通称『フォギィ・ブルー』で起こったテロについて、報じていた。
 政府の機関紙と地下新聞は、正反対の見地から事件を述べている。また、それ以外の新聞は、 検閲で記事のところどころ黒く塗り潰されている。しかし、全てにざっと目を通していくと、事件のおおよそが見えてきた。

「『東方三賢人』か」

 とタキオは呟いた。

 多くの新聞に、そのリーダーとされる人物の写真が載っている。鋭い眼差しに、男性的な顔立ちをした、ヒナウラ・オリザと言う女性。

 タキオが所有している賞金首リストにも勿論同じ顔が載っているし、ロミは、ユニコーン号で、実際に彼女に会ったと言っていた。

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