粉塵が完全に包み込むよりも早く、ビル群の外へ脱出したタキオは、そこでようやく足を緩めた。 ほとんど息切れもしていない我が身に感嘆しながら、ビル群に背を向け、歩き出す。ビル群の周囲は何も無い草地だが、 大分離れた場所に一つだけ、コンクリート製の高床の直方体が、ぽつんと建っていた。

 建物の裏側にある鉄製の梯子を使い、タキオが屋上へ上っていくと、ムートンブーツにダウンコート姿のルツが、 双眼鏡片手にビル群を眺めていた。

「よう」

「うわっ!」

 驚いてこちらを振り返ったルツは、傷一つないタキオの姿を認めると、胸を撫で下ろした。

「良かった。まさかあんな風になるとは思わなくて。ビルの下敷きになったかと思ったわよ」

よっ、とタキオは身軽に屋上へ飛び上がり、彼女の隣へ行った。

「どうだった、性能試験の結果は」

「それはこっちの台詞」

 ルツは、タキオのタンクトップから伸び、冬の日差しを受けて照り輝く二本の腕を、眩しそうに見やった。

「どう? 五千万の使鎧は」

 タキオはにやりと笑い、新たな機械の肉体で、答えた。

「ああ、最高だ」

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