ロミは手を組み、頭を垂れた。

 目を瞑ると、何もかもを呑み込む漆黒に、包まれた。その中心に、金色の炎が灯った。 己の瞳と、同じ色の炎だ。嵐の中で灯台を目指す船のように、病床の子供を見守る母親のように、それを見つめ、ひたすら祈った。


 どうかレインが、無事でありますように。


 どれ程そうしていただろうか。目蓋を開け、拳を解こうとした時には、剥き出しの指が、寒さですっかりかじかんでいた。 痛みを堪えて指を引き離すと、ロミは後ろを振り向いた。

「ごめんね、イオキ。お待たせしました」

 イオキは大きな瞳を見開き、茫と前を見つめていたが、ロミと目が合うと、ゆっくり頷いた。白い皮膚と紅い頬が、陶器のように光っている。 待たされて怒っている様子ではないが、ロミが祈っていた間、まるで別の行為をしていたように見える。 ともかく、相手が頷くのを見たロミは、イオキを連れ、翼竜のブロンズ像の前を離れた。

 二人は、ルツの家からバスで十分程の、小さな恐竜博物館に来ていた。博物館とは言っても、公民館の二階に 少しばかり化石が展示されている程度だが、一応学芸員も在中しているし、土産物コーナーもあった。

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