「そら、お前は、いちいち物事を大げさに捉えたがる! お前のそういう過激な記事のせいで、悪戯に市民が混乱したり、 不安に陥るんだ! 私は、それを止めろと言っているだけだ! 我々マスコミの影響力を、お前は分かっていない!」

「分かっているとも! だからこそ書くんだ!」

 青年は拳を振り上げる。

「大げさに捉えているんじゃない! 我々の使命は、世界の真実を伝えることでしょう!  俺は、皆が見て見ぬフリしている事実を、そのまま書いているだけだ!」

「見て見ぬフリをするのは、その必要があるからだ!」

「必要さえあれば、何の罪もない人間が喰われるのも、仕方ないと? それが、人間の台詞ですか?  まるきり、グールの台詞じゃないか!」

「いい加減にしろ!」

 机を叩きつける、激しい音がした。

「皆、迷惑している。それが分からないのか? 半年前あれ程の論争が巻き起こったのに、今じゃもう誰も、この件については触れやしない。 お前が『週間世界』に書いている連載にも、苦情の手紙が山のように来ている。さっさと止めさせろ、とな。
いいか? 皆、平和に暮らしたいんだ。この瞬間も、『人間農場』の『家畜』たちが領主に喰われている。 私たちは、その犠牲の上に立って、生きている。その罪悪感を常に抱え、針の筵に座って生きろ、とお前は言っているんだぞ。 お前にそんなことを言う資格が、あるのか?」

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