「成る程。予想通りの答えね。勿論信用しないけど。魔耶(マヤ)、次回の尋問は何時がいいかしら」

「大分かかるよ。喉に火傷は負っていないから喋ることは出来るが、尋問に耐えうるまで体力を回復させるとなるとね。 ま、幸い手術は上手くいったし、背中以外はケロイドも残らず綺麗に治ると思うが。早速リハビリを始めて、 次回の尋問は、そうだな、早くて三日後。どうだ?」

 女は艶然と微笑んだ。

「良くってよ。実際のところ、その子供が『東方三賢人』のメンバーであろうとなかろうと、大したことじゃないの。 すでに正真正銘リーダーと、以下主要メンバーと目されている者が四人も、こちらにいるんだもの。 その子が療養している間、我々はゆっくりと彼らを尋問しているわ」

「あまりやり過ぎるなよ」

 マヤ、と呼ばれた女医は、鬱陶しそうに煙草の煙を吐き出した。

「こいつなんかより、彼らの方が余程重傷だ。加減を間違えれば、簡単に死ぬぞ」

 釈迦に説法よ、と女は笑い、軍服を翻した。見張りを一人を残し、他の者も彼女に続く。彼らの足音に続いて扉の閉まる音がすると、 一気に、部屋の空気が軽くなった気がした。

 高い頬骨の上から、蛙の標本を見るような目で、マヤはレインを見下ろした。

「良かったな。お前は多分、生きて此処を出られるぞ」

 レインは目を閉じた。もう一度、鼻息で、煙草の煙を吹き飛ばそうとする。どうやら、今度は成功しそうだ。

 早くも回復を始めた体力と共に、空腹を感じた。

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