それは、エマオとラキの、顔だった。

 浅黒く無骨な顔立ちのエマオと、色が白くまだ幼さが残るラキ。 骨格も大きさもまるで違う二人の顔が、 真ん中で無理矢理縫い合わされ、醜く引き攣れている。よく見れば、全身も、二人のそれぞれの身体の部位を、 縫い合わせたそれなのだった。

 オリザは立ち尽くした。
 その隙をついて、敵は再び、跳びかかってきた。


 動けない。あれ程の痛みも力も、全て消えた。

 共に戦い、共に拷問に耐えた仲間の顔が、自分を殺そうと猛スピードでこちらに迫ってくるのを、見つめることしか。


 化け物と化した仲間に再び絞め殺されそうになったその時、レインが飛び込んできた。一瞬遅れて聞こえてくる銃声に立ち止まることなく、 オリザと化け物の間に割って入る。邪魔をされた化け物は苛立ったように、唸り声を上げた。唸り声はそのまま、唇を縫いつけた糸を破り、 耳まで裂けた口を開かせた。

 腐った苺のような歯肉と、まばらな白い歯を剥き出し、化け物はレインの肩に噛みついた。
 オリザの胸の中で、レインは苦痛の叫びを上げた。その悲鳴で我に返ったオリザは、反射的に、相手の顎を殴りつけた。

 レインの肩に数本の歯を残し、化け物はよろめく。その隙に片腕一本でレインを抱え、後ろへ下がる。 しかしそれからどうすれば良いのか、全く分からない。

 逃げるべきか、戦うべきか。それとも、相手の名前を、呼ぶべきか。

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