答えなどない。冷静な判断力も、問いに対する思考力も失われ、 折れた腕の激痛すら感じない。もう一人の仲間はどうしたのか。まさか彼女も、同じ末路を辿ったのか?  そんな疑問も浮かんでは消えるが、ひどく曖昧で朦朧としている。

 辛うじて、ミアンのように床に膝をつかないでいられるのは、レインが腕の中で呻いているからだ。子供二人が側にいるからだ。 彼女がここで死ねば、子供たちも捕まり、遅かれ早かれ殺されるのは、目に見えている。




 しかし、己が本当に守るべきは、目の前で咆哮する、この化け物ではなかったのか。




 レインを抱えたまま動けない彼女を見て、斑模様の秘密警察官が「待て」と、化け物を制止する。 オリザだけを始末しようと言うのだろう。
 彼女の額に狙いをつけ、素早く銃の引き金を引く。


 あ、と脳が呟いた時には、もう遅い。


「おらあっ!」

 頭蓋骨が砕け、脳味噌が潰れる音が、部屋中に響き渡った。

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