拳銃を構えたまま、斑肌の秘密警察官は、ゆっくりと前のめりに倒れた。叩き割られた後頭部から、血と脳漿を噴き出しながら。

 その後ろから現れた人物を見て、オリザは思わず、名前を呼んだ。

「トリィ……」

 鉄の棒を構えて立っていたのは、共に秘密警察に捕まった、もう一人の仲間だった。

 長かった髪を無残に切られ、ほとんど半裸状態のトリィは、オリザに負けず劣らず、悲惨な姿だった。 辛うじて五体は無事だが、その皮膚は、様々な種類の生傷に覆われている。 血まみれの両手で、どこからかへし折ったらしい鉄のパイプ管を掴んでいるが、 よく見ると右手の親指は根元から無くなり、上から巻いた布に今も鮮血を滲ませている。

 秘密警察官の返り血を浴びたトリィは、パイプ管を構えたまま、死体を乗り越えて部屋に入ってきた。 こちらには目もくれず、ただ、つぎはぎの化け物を睨みつけている。その瞳は、狂気じみた光を放っている。

 くるりと振り向き、縫い潰された両目で主人の異変を悟った化け物は、涎を垂らしながらトリィへ襲いかかった。

 正面から襲いかかられたトリィは、顔色一つ変えず、パイプ管を振りかざした。

「止めろ!」

 とオリザは、思わず叫んだ。

「そいつは……!」

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