「うらあああっ!」

 雄叫びと共に、トリィは渾身の力で、パイプ管を化け物の額に振り下ろした。

 衝撃で額の縫い目が裂け、エマオとラキの顔が上下にずれる。
 止めろ! と、オリザは絶叫した。

「そいつは、エマオとラキだぞ!」

 その名前を口にした瞬間、吐き気がこみ上げ、視界が歪む。輪郭が空ろになっていく視界の中で、化け物は叫び、両手で顔を覆う。 それを見ながら、トリィがパイプ管を構え直す。

「だから何だっつーんだよ」

 無表情な横顔で、トリィは呟いた。

 そして、再びこちらに襲いかかってこようとする化け物の顔面に、パイプ管を叩きつけた。

 今度は衝撃で、両目を潰していた縫い目が解ける。その下の眼窩には、何も無い。空洞がぽかりと開いている。 そこへ続く第二撃、第三撃が、眼窩を砕く。鼻筋を、歯肉を、頬骨を。

「止めろ! 止めろ!」

 オリザはレインを乱暴にどけ、トリィを止めようと進みかけた。しかしその衣服の裾を、レインが掴んだ。

 離せ、と声を上げるよりも早く、驚きに目を丸くしたレインが、部屋の入り口の方を指差していることに、オリザは気がついた。 オリザははっとして、その指の先を見た。

 後頭部を砕かれ、死んだはずの斑肌の男が、うつ伏せのまま顔と腕だけを上げ、トリィに銃口を向けている。

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