ごぼり、と音を立て、男の口から真っ赤な血が溢れ出し、トリィの頭上に降り注ぐ。 同時に、オリザは満身の力を込め、喉の上にある男の足を、押しのけた。

 顎と胸元と腹部を真っ赤に染めながら、オリザとレインとトリィの目の前で、男は床にもんどりうった。

 やった、と思う余裕はない。気管が破れんばかりの苦痛を堪え、オリザはすぐさま起き上がった。
 案の定、男はパイプ管が腹に刺さった状態のまま、起き上がろうともがいている。そこへトリィが、男の取り落としたサーベルを拾い上げ、 容赦なく心臓に突き刺した。

「流石アンブルの生物兵器。さしずめお前は、頭を潰されても心臓を刺されても死なない、人喰鬼並みの再生能力を持った化け物か」

 標本ピンに刺された虫のように男の体が跳ね上がり、それでもなお生きているのを見て、トリィは呟いた。

「貴様……っ!」

 苦痛と憎悪に歯を喰いしばり、男はトリィを睨みつける。戦慄くその手が伸びて、心臓のサーベルを抜こうとする。 その手を勢いよく踏みつけると、もう一本のサーベルを拾い上げ、トリィは男の首に突きつけた。

「本物の人喰鬼は首を斬り落としても死なないらしいが、てめーはどうだ?」

 止めろ、とオリザはそこで、トリィの手首を掴んだ。

「動けなくすれば、充分だ」

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