じろり、とトリィは横目でオリザを見る。オリザは黙って、トリィの瞳を見つめ返す。

 二、三秒後、トリィはふん、と鼻を鳴らすと、オリザが制止する間もなく、サーベルを男の口の中に突き立てた。

 男の叫びは、声にならない内に、消えた。
 腹、胸、口と貫かれ、とうとう男の動きは、止まった。

 言葉が出ないオリザの目の前で、トリィは長い息を吐いた。その体は頭から足の先まで、己の血と汗、 そして敵の返り血で、本来の皮膚の色が分からない程に染まっている。足取りは弱々しく、息も絶え絶えだが、それでも態度だけは気丈に、 レインを見て言った。

「お前、何で此処に居るんだ? て言うか、よく生きてたな」

 レインは見開いた目で気絶した男を見つめたまま、黙っている。トリィは顎で、オリザが繋がれていた鎖を指した。

「こいつ、そこに縛るぞ。ストレッチャーこっちに引っ張って来い」

 漆黒の瞳の少年は、動かない。

「来いってば!」

 トリィが怒鳴ると、ようやくレインはのろのろと動き出した。

 その間に、オリザは今にも倒れそうな体を引き摺り、トリィが継ぎはぎの化け物と戦っていた場所へ、向かった。

 化け物は、死んでいた。原型を留めない程顔面を破壊され、頭も粉々にされて。

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