「撃て、撃て、撃てーっ!」

 前から後ろから、銃弾が蜂の群れの如く襲ってくる。
 それでも特殊合金の身体には傷一つ凹み一つつかないし、当たった衝撃さえ、 ほとんど伝わらない。タンクトップはとうに消し飛び、首から上には弾のかすった跡が幾つかあるが、身体は無傷だ。 天才使鎧職人の腕、恐るべしである。

 タキオは、後方から撃ってくる部隊を無視して跳躍し、前方を塞ぐ部隊に突撃した。両の拳で軽く触れるだけで、 秘密警察官たちは引き金に指をかけたまま、呆気なく吹っ飛ぶ。空いた隙間を駆け抜け、階段を上がる。

 彼が走っているのは、もはや、狭く暗い通風孔などではなかった。サイレンが回り、ひっきりなしにスピーカーは喚き続け、 角からは次々と秘密警察官たちが湧いて出る、表の廊下だ。道は多少複雑だが、少なくとも通風孔よりは、上階を目指すのは容易い。 秘密警察官たちの迎撃を、除けば。

 崩壊した瓦礫の中から這い出た直後に始まった、タキオと秘密警察官たちとの攻防戦は、時間の経過と共に激しさを増していた。

「頭を狙え!」

 急な螺旋階段を二段飛ばしに昇っていくと、マシンガンを構えた小部隊が、ずらりと待ち構えていた。おっと、とタキオは呟くと、 彼らが引き金を引くより早く、上方へ跳んだ。

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