一跳びで、己の身長の何倍もある高い天井に、頭が触れる。一斉に発射された銃弾が、虚しくタキオの遥か足下を通過していく。
空中で一回転すると、腕を交差して頭の盾にし、タキオは彼らの中に飛び込んだ。

 哀れな第一犠牲者は、マシンガンもろとも両腕を粉々に踏み潰され、悲鳴を上げた。
 同情している暇は無い。着地するのと同時に、 横にいた一人の顎を殴りつけ、前にいた一人を階段の下へ蹴り落とす。敵は長い悲鳴と共に奈落へ転げていったが、 途中でその悲鳴は消えた。死んだのかも知れない。しかしやはり、同情している暇は無い。

 残る二人を肘と裏拳で吹き飛ばし、タキオは先へ走った。一秒でも早く、飛行場へ辿り着かなくてはならない。 此処から脱出しなくては。恐ろしい化け物に、追いつかれる前に。

「だから、そいつに銃弾は効かねえっつてんだろうが!」

 と、その時、遥か背後から咆哮が聞こえた。

 タキオは思わず悪態をついた。

「くそっ、もう追いついてきやがった」

 後ろを振り向くと、上から降ってきた仲間を紙屑のように払いながら、ガロウが螺旋階段を上がってくる。 踊り場に積み重なっていた仲間を容赦なく踏みつけ、ガロウは吼えた。

「てめーらそこ退け! そいつは俺の獲物だ!」

 新たな小部隊が角を曲がってタキオとガロウの間に現れ、銃を構えている。ガロウの咆哮が聞こえなかった筈がないが、 退く気配はまるでない。

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