瓦礫から這い出るのが、ガロウよりタキオの方がずっと早かったこと。そして、生体兵部と他の秘密警察官たちの 連携が、上手くいっていないこと。タキオにとって、この二点は僥倖だった。さもなければ、今頃とうに、 あの野獣に追いつかれていただろう。

「我々は副長官の指示で、すでに作戦を展開している!」

 銃の引き金に指をかけながら、内一人が、ガロウに怒鳴る。

「お前こそ邪魔をするな、生体兵部! 大人しくしていろ!」

 タキオは体勢を低くすると、ガロウと小部隊は無視して、前へ走り出した。背中に当たる弾丸など、問題ではない。

 問題は、とにかくガロウを振り切ること、そして一刻も早くレインたちと合流すること。この二点のみだ。 最も厄介な存在であったゴズは、瓦礫に押し潰されていたのを、更に念を入れ、両手両足を粉々に叩きのめしておいた。 これで、通風孔を自在に動ける敵は、居なくなった筈だ。後はレインたちの無事を祈りつつ、己が足を動かすしかない。

 と、果物が弾けるような音と共に、怒りの咆哮が、通路に轟いた。

「退けっつってんだろうが!」

 タキオは思わず振り向いた。そして、我が目を疑った。

 ガロウが、仲間である筈の秘密警官たちを、薙ぎ払っていた。大きな鉤爪の一振りで、横一列に並んだ警官たちの頭が、 次々と弾け飛ぶ。

 ドミノ倒しになった死体の列を跳び越え、ガロウは、こちらへ突進してきた。

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