「後五メートルだ!」

 五メートル?

 咄嗟にタキオは、行く手の先、ガロウの背後に目をやった。扉も窓もない廊下が、少し先でT字路になっている。 特に変わった様子はない…… 否。

 壁と床を横断する一本の溝に、タキオは目敏く気がついた。あれは恐らく、非常時に通路を遮断するシャッターの溝だ。 シャッターで通路を分断し、ガロウと共に閉じ込める気か。或いは有毒ガスを噴射する装置があり、 密閉空間の中で毒殺しようと言うのか。

 いずれにせよ、どれ程シャッターが硬かろうが、タキオの使鎧の前には無意味だ。

「ほら、お前の上司がここ通せって言ってるぞ」

 右の拳をガロウの鳩尾に繰り出しながら、タキオは言った。
 ガロウは反抗的な表情だったが、舌打ちすると、拳を避けざま、後ろに大きく跳んだ。同時に、ヒルの鋏が大口を開け、タキオの背中に迫る。 タキオはガロウの後を追い、背後で鋏の閉まる音を聞きながら、シャッターラインを跳び越えた。

 するとタキオの思った通り、警報音と共に、背後とT字路の両角のシャッターが下り始めた。 ヒルと副長官たちの姿が、分厚いシャッターの向こうに消えていく。タキオはあえてそれを無視し、ガロウと戦い続けた。 罠だろうが何だろうが、ガロウと一対一で勝負が出来るなら、その方が有り難い。

 完全にシャッターが下りた。
 と同時に、シャッターの向こうで、副長官が叫んだ。

「爆破!」

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