「死んでない!!!」

 ミアンの絶叫が、部屋を震わせた。

 言葉を途切らせる女に、ミアンはまなじりを吊り上げ、肩を震わせ、泡を吹き、詰め寄る。

「私は見たんだから! レストランの天井が落ちてきた時、ノキヤちゃんは、私の上に覆いかぶさって、助けてくれた!  お腹から内臓が出ていたけど、血みどろだったけど、瞬きしていなかったけれど、確かに生きていたんだもの!」


 レストラン全体が崩落していく中で、確かに見た。その腕の温かさも、錯覚などではなかった。


 彼は死んでいなかった。今だって、死んでいるわけがない。
 私と同じように捕らえられ、この『塔』の何処かに居るに、決まっている。


「ノキヤちゃんがあなたたちの仲間だったなんて、嘘よ」

 握っていた拳は自然と開き、女の喉元へ向かう。

「反グール主義テロリストだったなんて、嘘よ。ノキヤちゃんのお父さんは政府高官だし、ノキヤちゃんも将来は お父さんのようになりたいって言っていた」

 まるで、炎の蛇が、血管の中でのたうっているようだ。熱い。熱い。粘膜を喰い千切り、目からも口からも、 蛇が飛び出してくるよう。

 鎖骨の折れた女の肩を、ミアンは万力で、掴んだ。

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