「ノキヤちゃんがあんな風になったのは、全部、全部、あなたたちのせいよ! あなたたちがいなければ、 ノキヤちゃんは、あんな酷い死に方しなかった!」


 目を見開く女の前で、ミアンは泣き叫びながら、崩れ落ちた。


 信じられない。信じたくない。嘘だ。全部嘘に決まっている。



 ノキヤちゃんは生きている。死んでいるわけがない。私はノキヤちゃんと一緒に、家に帰るんだ。
 それだけを信じて、此処まで来たのに。



 慟哭するミアンの背後で、物音がした。通風孔からレインが落ちてきて、真っ直ぐこちらへ駆け寄ってきた。 近くにあったストレッチャーを引っ張り、女の傍に持っていく。ストレッチャーに上ると、左手の使鎧やガラス片を使い、 拘束を解きにかかった。

「この鎖は切れない…… そこの壁に、鎖の端が繋いであるだろう。そっちを見てくれ」

 揺れる度、肩に激痛が走るだろうに、女は気丈にも呻き声一つあげず、レインに指示を出す。
 レインは女の指示通り動き、数分後、ようやく滑車を回すことに成功した。左手首に鎖をつけたまま、 女はどさりと床に落ちた。

 女は一瞬、激痛をこらえるように体を丸めたまま動かなかったが、やがて体を起こすと、ミアンを見下ろした。

「行かなければ。すぐ奴らに見つかる」

 謝罪の言葉も弁明の言葉もなく、女はただ一言、そう言った。

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