二人が砂を体から払い落とすと、窓から差し込む薄光の中で、舞う砂が銀色に光った。しかし、
髪や着物の隙間、靴の中に入った砂を完全に掃き出すのは、難題だった。二人は早々に叩く手を止めると、
砂っぽい感触を皮膚に残したまま、閉じた窓越しに外を眺めた。 列車は今、滝の間際を走っており、窓に白い砂が打ちつける様子以外、何も見えないのは、 さながら透明な豪雨に閉じ込められているかのようだ。 「綺麗だね」 と、顔に砂の影を映しながら、イオキは言った。レインも窓の外を眺めたまま、頷いた。 扉一枚隔てた食堂車から、楽団の音楽が聞こえてくる。酔っ払った人々が、音楽に合わせて歌い踊るのが聞こえてくる。 「本物の滝みたい。溺れるかと、思った」 そう呟くと、イオキはゆっくり、レインの方を向いた。 「ねえ、何してた?」 レインは黙って、漆黒の瞳で、こちらを見つめ返す。 「鉄条網を抜けて、森の外に出て、何を見た? どんな人と出会った?」 深い緑色の瞳が、無数の砂粒が舞う光の中で、複雑な模様に煌く。 「『人間農場』から出て、良かった?」 -------------------------------------------------- |