ロミからスカーフを受け取ったイオキは、緩く自分の頭に巻き、伸び上がって、老婆の背後の窓に自分の姿を映した。 振り返り、レインを見てちょっとはにかんだ。レインは首肯し、ロミも「似合うわ」と顔を綻ばせた。

「それから、これがレインのね。それから、えーと…… これはタキオの!」

 レインには、透けない、肌色に濃い藍色の縞模様のスカーフが渡される。タキオには、荒い織りに房がついたのが。

「俺はいらねーよ」

「何でよ」

 レインが不器用に頭に巻こうとすると、イオキが手を伸ばしてきた。悪戯っぽい笑いを秘めながら、漫画の泥棒のように、 レインの鼻の下でスカーフを結ぼうとする。されるがままになっていると、自分用に朱色の更紗模様のを選び出したロミが、 声を上げた。

「やだあ、イオキ。これはそんな風に巻くんじゃないのよ」

 ロミの手が伸びてきて、レインの首周りに、スカーフを巻きつける。

「男の人は、こうして首周りに巻いておく人が多いの。砂埃がひどくなったら、こうして後ろを持ち上げれば、 髪を覆えるでしょ?」

 スカーフを巻くと首周りが暑かったが、レインは、大人しく巻かれたままにしておいた。

 タキオが、スカーフに付いた値段を見て、「高いな」と面食らったように言った。同時に老婆が目を開け、 タキオを睨んだ。タキオは肩をすくめ、大人しく三人分のスカーフの代金を払った。

 すっかり華やいだ一行は、老婆に挨拶をして別れ、更に先へ進んだ。

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