レインはわざとゆっくり歩き、一行の最後尾になるようにした。そうすると、ロミとイオキが並んで歩く姿が、 よく見えた。

 ロミの足取りは軽かった。白い壁に、彼女の影が弾んでいた。 ユーラクに入国した直後、満開のチューリップ畑で見せた衝撃の表情は、すっかり鳴りを潜め、 代わりに、歌う小鳥のような高揚感が、常に体から滲み出ていた。きっと、慣れ親しんだ故郷へ帰れた嬉しさなのだろう。
 チューリップ畑で見せた表情は、レインにはまるで理解出来ないものだったので――
 慶びとも、憔悴とも、憤りとも見えたのだ――
 今の彼女の足取りの方が、ずっと安心出来た。

 そして、そんな軽やかな足取りに誘われるように、いつの間にか、イオキも、ロミとよく並んで歩くようになっていた。

 聞けば、イオキとロミはクリスマスの前に出会ったと言うから、四ヶ月近く共に行動しているのである。 並んで歩くのも当然と言えば当然なのだろうが、レインが彼らに再会したとき、二人は、とてもそんな長く一緒に居る間柄には見えなかった。

 別に、だからと言って、レインがそのことを気に病んでいたわけではないが、こうして二人が仲良く歩いているのを見ると、 やはり何となく嬉しい。
 イオキは、ロミの前ではあまり笑顔を見せず、またロミも、イオキに対して一定の距離を置いているのが感じられるが、 それでもとにかく、こうして並んで歩いている。時折、無邪気に、はしゃぐことがある。

 今のところ、その中心でバランスを取っているのが自分だ、と言うことまで、レインは気づいていなかった。
 ただ、こうして三人でいつまでも行けたら良かろう、と思っていた。

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