それから一行は小さな市場で、清潔なハンカチや、お揃いの歯ブラシ、ライター、十徳ナイフなどを買った。 ロミが、洗濯用の石鹸を探しに行っている間に、レインとイオキは、安いが妙ちきりんな柄の靴下を、 八足も買った。

「お前ら、無駄遣いするなよ。食料を買う金がなくなるぞ」

 タキオが財布の中身を睨みながら言い、レインはそそくさと食べ物の店へ向かった。

 朝の活気ある時間帯を過ぎた市場に客は少なく、余所者が珍しいのか、一仕事終えたテントの下からは、 好奇の目が追ってくる。どちらかと言えば穏やかな視線だが、それでもイオキは怖いのか、レインの後ろに隠れるようにしている。 レインは左手の使鎧のお陰で、好奇の視線には慣れっこだ。

 あちこちの店を回り、香辛料で味付けした羊肉の燻製と、干しイチジク、塩漬けのオリーブ、砂糖とチョコレートをかけた揚げパンを、 弁当用に包んでもらった。最後にピーナッツを買った店で、太った店主が、イオキの緑の瞳を見て、ウインクした。

「おまけしてあげような」

 レインの後ろから、イオキは嬉しそうに笑った。

 薄荷水の大きな壜を買っているタキオの元に、ロミも息を弾ませて、帰ってきた。

「ねえ、これ! 良い香りでしょ?」

 そう言って紙袋から取り出した洗濯用石鹸からは、茉莉花の香りがする。

「おいおい。こんなので洗ったら、俺の服まで素敵な香りになっちまうじゃねえか」

 タキオは鼻の頭に皺を寄せたが、レインはとても良い香りだと思った。イオキも胸いっぱいに吸い込み、うっとりとした顔をした。

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