この風景は、ロミとルツと一緒に行った公園の風景にそっくりだ、とレインは思った。レインがタキオとロミに出会い、 それから程なくして、ルツの家を訪ねてから、直後。タキオがワルハラ第一都市に出かけている間、三人でバスに乗り、 オーツの根本にある公園へ行った時のことだ。

 あそこも気持ちの良い陽に照らされていた。沢山の人々が、昼寝したり、おやつを食べたり、遊んだりしていた。 皆とても幸福そうで、この世に不安や翳りなど存在しないように、見えた。

 彼らを眺め、ロミは金色の目を細めた。

『家の近くに、こういう感じの丘があったの。よく家族でそこに遊びに行ったんだ。 車なんか持ってなかったから、砂埃だらけの道をてくてく歩いてね。
私の住んでた場所は砂だらけで、緑が豊かなのはその丘くらいだったから、近所の人も皆そこに来てた。
お父さんはその人たちと立ち話、お母さんは布を敷いて、その上で妹にお乳をあげてた。私はお兄ちゃんと一緒に、凧を揚げたの』

 そう語った横顔が、この上もなく安らかで、同時に、手が届かないほど寂しげだったこと。

 レインはよく、覚えている。

 そして今、はっきりと分かる。

 あの時彼女の見ていた場所が、此処なのだと言うこと。
 時を経て、その場所は変わってしまい、彼女が家族と過ごした幸福な時は、完全に砂煙へ消えたのだと言うこと。

 そして、それを思い知らされた時の気持ちは、とても、言葉になどならない、と言うこと。

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