イオキは黙ったまま、何か考えているようだ。

 ふと、不安と悪戯心が湧き起り、ミトは冗談めいた調子で尋ねた。

『イオキは、僕と一緒にいたくない?』

 途端に、イオキはしがみついてきた。

『嫌だ! ずっと一緒にいる!』

 深い満足感と幸福を味わいながら、同時にミトは、罪悪感を覚える。
 体を横にすると、イオキと向き合い、間近にその瞳を覗き込んだ。

『僕も一緒にいたい。けれど、いつか仕方ない理由で、離れ離れになる日が来るかも知れない。キリエとも、この屋敷とも。 世界でたった一人になってしまう時が来るかも知れない。そうしたら、ひどく寂しくなるだろうけど、忘れてはいけないよ』

 花の蜜の如き清潔で官能的な香りが倦む、二人の間に出来た、二人だけの空間に、秘密を教えるように、囁く。

『僕が、永遠に君を愛していることを』

 イオキは瞬きもせず、ミトを見つめていたが、やがて微笑んだ。

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