『ただ私は、残虐非道な暴君に、仕えてしまった。人類の敵に回ってしまった。 しかも、まるで知らない間に、そうなったわけではなかった。 大丈夫、きっとそんな沢山の血しぶきはかかってこない、と己に言い聞かせながら、数えきれぬ虐殺に加担してしまった。 そして、足の下が血の沼になっている、と気づいた時には、もう遅かったのです。


 「それが仕事だったから」
 「直接手を下したことは一度もないから」
 そんなものは、言い訳にならない。


 最早血の沼から抜け出せない、と知った時、私が選んだのは、足を切り落とすことでも己の命を絶つことでもなく、 じわじわと深くなっていく沼の中に、じっと立ち続けることでした。



 ただ、それでも一言言わせてもらえるなら――






 私は本当に、ムジカ様が憎かった。全てのユーラク国民と同じくらい、もしかしたら、それ以上に。









 何を以てしても、罪滅ぼしは不可能です。彼女の叫び声が、私の頭の中でこだまし続けています。 もう耐えられません。両腕はすでに沼の下に沈み、とうに、耳を塞ぐことは出来ません。


 二人で観に行った『天空の城』を覚えていらっしゃいますか?
 ムジカ様とイオキ様は、あそこにいらっしゃいます。

 何もかも、本当に申し訳ございませんでした。』

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