機材を抱えたダイを背後に、オズマが腕時計に目をやり、怒鳴り返す。

「こっちの準備は完了! テレビ局占拠も完了予定の時刻に到達! 中継開始だ!」

 タキオは大きく息を吸い込んだ。

「……よし!」

 六本の腕にそれぞれ武器を持ち、ニイナが、斜め上から襲いかかってくる。 惜しみない弾幕に、糸に吊り下げられた体全体で纏わりつくような、複雑怪奇な手足の動き。 そしてそれらフェイントの中でただ一点、喉元を狙ってくる、鋭い刃。まさに、長い手足と狡猾な頭脳を持つ、巨大な蜘蛛だ。 動きに慣れるまで、とても敵わない。

 切り裂かれたジャンパーとタンクトップを毟り取って相手に投げつけると、タキオは床を蹴り、距離を取った。投げつけられた服を相手が剥ぎ取るまで、ほんの数秒しかない。
 そのまま、床一面に溢れた桃色の髪を踏みつけ、その中心にいる人物を、指差す。

 告げなければならない。たった一言、全てを理解させる一言を、全世界の人々に。

「見ろ」

 と、テレビに向かい、タキオは言った。

「あれが、人喰鬼の女王だ。全ての人喰鬼の、母体だ」

 言い終わるより早く、ニィナが怒りの形相で飛びかかってくる。稲妻の如くロミが飛び出し、行く手を阻む。 オズマの白刃が閃き、彼女の腕を切り落とそうとする。直前、彼女のサーベルが翻り、激しく交叉する。

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