アイの首を絞める手に更に力を入れ、アリオは叫ぶ。

「こいつが実行犯だ! こいつがあの日、五百人以上いた施設の人たちを眠らせ、火をつけた。 その後、ひい婆ちゃんの手紙に勘付いて、葬式のとき僕からそれを奪おうとした。 こいつが十七年前、大量虐殺をやったんだ! そして今度は、それを隠蔽する為に、僕を殺そうとしている!」

 切れ切れに、アイが喘いだ。

「この人の奥歯に、毒を噴射するスイッチが……」

「ばーか! もう本体のスイッチが入ってるよ!」

 狂ったように笑うアリオは、すっかり形勢逆転し、青褪めるアイの息の根を、今にも止めようとしている。

「動くな、はこっちの台詞だ! 少しでも動いてみろ! この女の命はないぞ!  領主を呼べ! あの人喰鬼に、十七年前のことを、国民の前で謝罪させろ!」

「それは無理だ。彼は今、連絡が取れない。何処にいるかも、分からない」

「そうかよ。それならそこで、大人しく見てるんだな! 第二都市の住民が、死んでいく様を!」

 哄笑するアリオに、トマは冷静に言った。

「しかし、俺は死なないぞ」

 アリオの笑みが、凝固した。

「『白鬚殿下の秘密の毒薬』は下へ行く。ここにいる限り、俺が毒を吸うことはない。俺はお前を逮捕する。 難しいようなら殺してもいいと許可されている。この状況で、お前に勝ち目はない」

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