その言葉は、誰に向けられたのか。

 タキオか、ロミか、レインか。

 無言ではいられない命に満ちた、この世界か。

 ロミは死んだようにイオキを見つめていたが、やがて唇を動かした。

「……どうしたらいいの?」

 胸から押し上げられて歪んでいく声が、雨に消えていく。

 握った拳に、震える足に、燃える瞳に収まりきらない怒りが溢れ出し、彼女の全身を捩らせていく。

「どう行けば、幸せなんかあるのよ!」


 己を挟んで見つめ合う二人の声が、レインには聞こえるようだった。


 何故、己を喰らう物に、己と同じような言葉があるのか。
 何故、己が喰らう物に、己と同じような感情があるのか。


 そしてレイン自身も同じ言葉に苛まれながら、雨の中、三人は対峙する。

 それでも彼らの生ける道は、たった一本しかないのだ。

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