「二人とも、仲良くしてくれ」


 レインは心の底から、そう願った。


 聞いた二人は、唇を噛んだ。目を伏せた。今にも耳を塞ぎたそうにした。

 けれど、首を振った。

「駄目。やっぱり人間を喰いたい衝動は止められない」

「私たちを喰らう種族と仲良く出来るわけない」

「私たちだって生きていたい」

「互いにそう思うなら、戦うしかない」

 二人の声が、漆黒の闇にこだまする。

「ねえ、レイン。それとも、私たちが一緒にいられる方法を、あなたが知っているの? 知っているなら、教えてよ。私たちだって、知りたいよ」


 レインは答えを探した。

 あんな沢山の経験をしたのだから、こんな沢山の感情が溢れそうなのだから、きっと何か見つかるはずだ。

 しかし、手探りした先には、虚無しかなかった。


 誰よりも己が、生きていること自体間違った存在なのだ。
 唐突にレインは思った。
 『人間農場』で夥しい仲間の死体の上に座り、息を潜めていた時と、何も変わっていないのだ。

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