「なーんか、小者感丸出しだったなあ」

 気絶した男たちの懐を探り、白い粉の入った袋を見つけ出しながら、ヒヨは言った。

「これじゃ、駅前にいるチンピラと変わんないじゃねーか」

「十年前には、こんなのいなかったんですけどねえ」

テクラが苦笑する。

「ある意味、毒素が薄くなってきたってことじゃないですか?」

「それにしたって、よりによってあたしらをカタギと思って襲ってくるとは…… あれか? メイドさんがいたから、油断しちゃったのか?」

 ヒヨがキリエを見ると、当の本人はトマを連れて、ずんずん先へ進み出している。

「わ、待ってくださいよっ」

 慌ててテクラは、キリエの後を追った。

 奥へ向かうにつれ、アンダー・トレイン内部の様子は、ますます混沌としてくる。

 ゴミが散乱する廃墟のような廊下が続いたかと思うと、扉を一枚隔て、屋内でありながら商店街を思わせる、活気に満ちた空間が広がる。

 しかし、どこも薄暗い。汚い。 通路に座り込む虚ろな目をした男、そのすぐ側に転がる薬の瓶、そこから這い出る鼠、壁についた銃弾の跡、床に残った血の跡。
 それらを当然のように乗り越え、歩く人々。

「ねー、そこの可愛いお兄さーん。一緒に遊ぼ〜よ〜」

 下着同然の格好で、少女たちがきゃらきゃらと笑う。

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