「あ、ありがとうございます……」

 顔を真っ赤にしながら、テクラは言った。
 キリエは答えず、分断された階下を見下ろした。

「どーしてくれんだよ!」

 若頭を人質に取られた構成員たちが、わめいている。

「うちの事務所はリフォームしたばっかなんだぞ! 階段まで落としやがって! ボスが帰ってきたら、俺たち、殺されちまう!」

「アホか。ヤクザの事務所をガラス張りなんかにする方が悪いんだろうが。お宅のボスは三人揃って脳が溶けてんな」

 不意に、構成員たちは黙りこくった。「ん」と異様な雰囲気に、ヒヨは怪訝な顔をする。

「……今、俺たちのボスは、三人じゃねえ」

「何?」

「二人だ。布由記(フユキ)さんは、つい一週間前、人買いザネリの野郎に殺された!」

 「!」とレッドペッパーたちは顔を見合わせる。

「じゃあひょっとして、今ここに残り二人がいないのは…」

「ああ。羽流姫(ハルキ)さんと奈津記(ナツキ)さんは、ザネリの奴を見つけたって報告を受けて、さっき出ていったのさ。ザネリの奴、今頃八つ裂きにされてるだろうよ」

 トマは素早く、相手の胸ぐらをつかんだ。

「場所はどこだ?」

「はん、てめーら軍人だろ。教えるわけ…」

 ドスン! と腹に拳が入る。

「……! レールの、下だ……」

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