三人は一斉に、イヤホンに手をやった。 『妙な案配になってきた』 緊迫感のある、太い男の囁き声が、イヤホンから聞こえてきた。 「どうした」 とトマは言った。 『ユーリが、人買い座根利(ザネリ)と話してる』 「人買いザネリ?」 テクラが思わず声を上げる。 「どういうことだ」 『ユーリが薬を選んでる最中に、ザネリの野郎が入ってきて…… 最初はユーリを無視して店主と話してたんだが、途中でいきなり、ユーリが話しかけてきたんだ』 「何を話してる?」 『分からん』 「ど、ど、どういうことですかね?」 ヒソヒソと、テクラはヒヨに囁いた。 「ユーリは、ザネリに会いにきたんでしょうか?」 「なにテンパってんだよ」 と落ち着いた様子でヒヨは言った。 「世間話してるだけかもしんねーだろ。第二都市のお勧めスポットはどこですかー、とか。 ザネリはアンダー・トレインを根城にしてんだし、たまたま会ったっておかしくねーだろ」 「けど、なんでそもそも、ユーリはここにいるんですか? 薬買うだけなら、駅前のドラッグストアで充分じゃないですか! こんなところに来るってことは、非合法の薬が目的か、もしくは――」 『ちょっと待て』 と、その時、いっそうの緊張を帯びて、男の声が響いた。 『ザネリが店を出る。ユーリと一緒だ』 -------------------------------------------------- |