「グレオさん!」

 とテクラは叫んだ。

「すまん…… ハルキがザネリを撃って…… ザネリの野郎がユーリを盾にしようとしたんで、割って入ったらこのザマだ」

 グレオの言葉に、テクラははっと首をめぐらせた。

 ザネリと対角線上、鉄骨が作る影の中に、中華風のドレスを着た女が一人立っている。まっすぐに拳銃をザネリに向けた手には、三頭犬の刺青が彫ってある。

「てめえら、こいつの仲間か」

 テクラたちを見て、ハルキは吐き捨てた。

「正義の味方気取ってこいつみたくなりたくなきゃ、すっこんでな。あたしは兄貴たちを殺したあいつを、殺したいだけなんだから」

「先に商売の邪魔をしてきたのは、あちらなんだよ」

 とザネリが言った。

 テクラはザネリを見た。ザネリはテクラを見て、笑った。

「久しぶりだな、テクラ。軍の生活はどうだ」

 ハルキのこめかみに、青筋が走った。

「ふざけんな、てめえ!」

 ハルキが拳銃を撃つ。ユーリが悲鳴を上げてもがくが、ザネリは彼をがっしり羽交い締めにしたまま、動かない。

 テクラの手首が閃いた。ナイフはハルキではなく、彼女が撃った弾丸目がけて、飛んだ。
 ピンポイントでナイフは弾丸にぶつかり、その軌道を変えた。砕けたナイフの刃が空中に散り、弾丸はユーリの足元に突き刺さった。

 目を丸くするハルキの肩と足に、ナイフが刺さる。ハルキは苦痛の叫びを上げ、その場に崩れ落ちた。

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