ザネリは肩をすくめた。

「もう、とっくに私の仲間が向かっていると思うけどね……
 まあいい。そろそろ時間だ」

 チラリと腕時計の盤面を確認するなり、ザネリはユーリを羽交い締めにしたまま、後退し始める。

「待てっ」

 とグレオは腹を押さえながら、立ち上がろうとした。

「こんな逃げ場のない場所で、どこへ行こうって言うんだ!」

「グレオさん、動かないでください!」

 その傷口から血が滴り落ちるのを見て、テクラは叫ぶ。

 ザネリは屋上の端まで行くと、「助けてくれ!」と叫ぶユーリをナイフで脅し、鉄骨を上り始めた。よく見ると、鉄骨のその箇所には、上へ上る為のステップがついている。

 ナイフを投げる隙を見つけられないまま、テクラはじりじりとザネリとの距離を詰めていく。
 彼らの姿が鉄骨の上部へ消えた途端、テクラもステップに飛びついた。

 その後からキリエも飛びついたのを見て、テクラは仰天して叫んだ。

「危ないですよ! 戻ってください!」

 上空何百メートルという場所で、彼女のスカートが大きくはためく。ステップから手を離せば、命はない。

「早く行きなさい!」

 キリエはぴしゃりと言った。

 同時に、鉄骨が振動し始める。
 第二都市駅の方から、列車が近づいてきたのだ。

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